ARTIST
kato fumiko - bonsai art
加藤文子(盆栽家)
作家略歴:
1955年 大宮市盆栽町に生まれ、四代に渡る盆栽一家に育つ。
10代後半に、知り合ったドイツの友人とリュックひとつでヨーロッパを巡る。お金が底をつくまでのその旅は、後の生き方の原点となる。帰国後、自分に出来ることは何かと考え、盆栽を学ぶことを決め、 父 ・ 加藤秀男に10年師事。
1985年 大の音楽好きから《奏デル盆栽》と命名し、独立。
1990年 陶芸家の小沼 寛と結婚。以降、夫婦でのジョイント展や個展、ジャンルを超えた企画展に参加を重ねる。
1996年 那須に移り、植物との平和な生活を探っている。
近年、ウッドストックジェネレーションの現在、そして今後の動向を注目している。
主な著書
「盆栽ガーデニングⅠ・Ⅱ」メディアファクトリー
「草と木の小さな鉢」文化出版局
「加藤文子の奏デル盆栽ノート」リヨン社
「加藤文子の時を奏デル盆栽」NHK出版
「natural 盆栽 小さなみどりの育て方」講談社
現在連載中 オンライン文芸誌 「展景」
– 那須通信 –
小さな鉢のうえに、寄り添うに、あるがままに、のびのびと、安心したように、植物たちが居ます。
伝統や型にはとらわれない、自由で自然な加藤文子さんの植物たちを見ていると、今まで近寄りがたかった盆栽のイメージが取り払われます。
夫であり陶芸家の小沼寛さんの鉢と加藤文子さんの盆栽。独特のハーモニーを奏でています。自由を求め続けるお二人の生きざままでもが、その小さな宇宙のような盆栽と鉢の中に集約され描き出されているかのようです。
虫眼鏡でみるような、植物たちの小さな世界には、植物の発する空気から、妖精たちが潜んでいて、まるで羽音がきこえてきそうな薄くて軽やかな、小沼寛さんの陶の作品の世界と、その妖精たちは自由に飛び交い、行き来している、、、そんな幻覚がみえてきそうなのです。
著書の「BONSAI GARDENING(盆栽ガーデニング)」は盆栽の新風を巻き起こし、一世を風靡したことでも知られている、とても素敵な本です。
◆ Exhibition info:
<plan to exhibit>
● 2020-Dec 「I love komono Ⅲ 展」
<past exhibit achieved>
伝統ある埼玉県の盆栽の一族に生まれながら、加藤文子さんの内側からは自由への切なる想いがこみ上げていました。
伝統を重んじる一族の立場の中、自由に、伝統や型に捉われず植物による表現をすること、壁を超えて発すること、それはとてもエネルギーを要することだったかもしれません。誰よりも伝統を知っている、素養も備わっている。けれど、子供のころから、どこか、自身の内側に熱い自由への想いが確かに沸々とあることも感じる。
そんな中、産まれてきたのが加藤さんが創始なさった《奏デル盆栽》。
それこそが、自由への想いを求めた盆栽であり、そこには植物たちののびのびとした姿がありました。
その手によって、はじめて「新しい盆栽」が生まれたのでした。
いつの世も、保守的な事を打ち破り新しい事を始める最初の一歩は「賛否両論」強い追い風もあったかもしれません。
「いつでも、想う事は、植物のことばかり」
想いは、いつも植物たちとともにあります。
自然や植物が、どんな状況でも根を張り、太陽に向かって、自由にのびのびと生きていく様、生命力と姿、自然のメカニズム。それらにエネルギーを貰い、また加藤さんも植物たちにエネルギーを与えています。植物たちは、のびのびとしながらも、どこか凛としていて、小さな鉢の中に居ながら、精一杯生き、でもそこにはどうすることもできない厳しい自然の摂理もあることもわかりながら、お互いに信じあっている強さとはかなさのようなものを感じます。
小さな鉢の中で、太陽と水と土とともに、何十年と枯らせることなく、四季を過ごし、花を咲かせたり実をつけたり紅葉したり、している盆栽。伝統的な盆栽が人の手であえて作られた庭や山の姿であるなら、加藤さんの盆栽は、もっと草原や山々の景色や、野に咲く草や花のはかない姿などのありのままの自然の姿を表現しているようにも感じます。それはより日本人が古から愛している徒然なるままの自然の姿かもしれません。
盆栽で植物たちを育てる傍らで、作りためた、暖めた絵やイラストや、ハコモノ、その他小さなコモノなどがたくさんあります。
いずれも、植物の出てこないものはありません。意識はいつも植物たちと一緒です。
illustration
ハコモノ
漆を塗った枝
那須のアトリエとご自宅のある「あうりんこギャラリー」にて。鉢は夫であり陶芸家・小沼寛作